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さらに、スローイング時のヒジへのストレスは、図Hのように、球種やパワー、ヒジの使い方(位置)によっても異なります。
一般的に、直球はシュートと同じくヒジの回内運動でフィニッシュを迎えるため、内側上顆の痛みや上腕骨外側上顆に付着する筋群の炎症も起こりやすくなります。疲労が重なりフォームが崩れてくると、直球はシュートに類似したヒジの使い方になりやすいようです。
シュートが多くなればヒジの回内動作が多くなり、その拮抗筋である回外筋や指・手背部の伸筋群は引き伸ばしながらパワーを出さなければならないので、過大な張力(筋力)が要求されます。したがって、疲労も招きやすく、伸筋群の柔軟性が失われ、筋腱付着部の炎症を起こしやすくなり、圧痛や運動痛を伴うケースを見られます。また、シュートを投げるようなヒジの使い方が多くなると、前述した内側のインピンジメントを招きやすくなります。
カーブは、シュートとは逆の回外動作によって起こり、内側の押し込みと回内筋・背屈筋の伸張運動を伴うため、上腕骨外側上顆や内側にも痛みが生じるようです。
投球に関わる肩・ヒジ・手首・指の連係した動きがスムーズに行われるためには、投球を起こす筋群がよい状態(柔軟性・筋力・筋持久力)で保持されることが大切です。それができれば必然的にボールをコントロールするのに必要な調整力も高くなり、球威のあるボールも投げられます。そのためには、PNFトレーニングや投球数の調節、投球後のコンディショニングや休養などが必要なことは言うまでもないでしょう。
投球によって繰り返し起こる筋肉の収縮は、オーバーユーズを招きやすいということを忘れてはなりません。それは、筋肉の付着部の微細損傷につながるだけではなく、その収縮時に働く張力に対して、骨の内部応力が伴わない場合、骨に対する衝撃の負荷が高まり、疲労状態が骨にまで及んで疲労骨折を引き起こすケースがあるからです。たとえば、筋肉付着部の離裂骨折や骨軟骨の損傷などを起こしたりしますので、注意が必要です。[図I参照]