[1]投球動作の支点となる肩関節 | [2]いわゆる「野球肩」 | [3]肩甲上腕リズムのチェック | [4]肩甲胸郭関節の機能チェック |
野球の投球動作によって起こった肩の障害は、一般的に「野球肩」と総称して呼ばれています。
投球という回転モーメントを繰り返し行った結果のオーバーユーズや、筋肉の働く作用と肩の機能に対して無理な投げ方を続けることによって、肩関節周辺の筋肉や腱板、関節の滑らかさを維持する関節包などを痛めるケースが多くなってきます。とくにインナー筋は、肩を安定させたり、動かす上で重要な働きをしているにも関わらず、筋容量が小さいため、疲労しやすい筋群と言われています。
さらに、インナー筋とアウター筋の筋力、柔軟性のバランスが崩れると、肩甲骨に上腕骨をはめこむ力が弱くなります。そうしたなかでの投球は筋群を過剰に伸ばす動作もプラスされるので、より上腕骨頭が肩前方部を押そうとして、前方部の腱板にダメージを与えやすくなると考えられています。腱板のダメージまではいかなくても、筋肉の疲労が激しく、肩のだるさや重さが症状としてある場合は、動かしにくさや遠投力の低下、コントロールの乱れなどが生じやすくなります。
野手でも内野と外野では相違があり、内野手の場合は、かなり無理な体勢から素早く投球しなければならないことが多いため(肩関節にとって無理な投球フォームが求められるため)、肩前方部の痛みとヒジの痛みを訴えるケースが目立つようです。
外野手の特徴としては、遠投するため上肢に大きな回転と力が必要になるので、加速終了期に負担のかかる肩後方部に痛みがみられることが多いようです。したがって外野手は、遠投力を高めるだけではなく、肩を守るためにも、からだ全体を使って投げたいものです。
投手は毎回、全力で投球することが求められるわけですから、肩の障害を起こしやすいことは言うまでもありません。肩甲骨と上腕骨を結んでいるインナー筋の腱板、および上腕二頭筋腱、動きの円滑性を保っている関節包などに痛みを感じてくるケースが多いようです。
投球動作を考えると、ワインドアップからテークバック・加速期・フォロースルー期が、肩関節の外転・後方伸展・内外旋によって起こるので、その際に働くインナー筋と肩甲骨外縁の筋群に疲労が起こりやすくなります。
とくに、テークバック期から加速期、リリースポイントからフォロースルーにおいては、肩の下垂腕(腕を下げること)の内旋と後方伸展、そして、外転側方での外旋、前方挙上からの内旋などの動きは、筋や腱板にとってかなり負担が大きい動作になります。
投球時に直接外力が加わりやすい上腕肩峰関節、烏口肩峰靱帯と上腕の狭い隙間にある筋、腱、腱板や組織は、ねじれ、摩耗、圧迫などを起こしやすく、「インピンジメント症候群」(運動痛・圧痛)を招きやすいと考えられています。