[1]投球動作の支点となる肩関節 | [2]いわゆる「野球肩」 | [3]肩甲上腕リズムのチェック | [4]肩甲胸郭関節の機能チェック |
日々の投球動作は、肩周辺機構の筋肉群に対して疲労を招きやすいので、重たさや動きにくさを感じながら投球を行っている選手も少なくないでしょう。肩を痛めないためにも、日々の練習後のケアと年間を通じてのコンディショニングを心がけ、いい筋肉の条件である柔軟性と筋力、筋持久力を常に保ちたいものです。
さて、肩甲上腕リズムと肩甲胸郭関節の働きがいいか悪いかということを知るためには、それぞれ肩を中心とした上肢の動きによる可動性チェックテストを行います。
1) 肩外転挙上(側方)テスト
上肢を外転挙上する(手を太ももの横から真横に160~180度、上方に挙げる)簡単なテストですが、肩関節の円滑な動きを求める際に大切な、肩甲上腕リズムと肩甲胸郭関節の機能の状態をチェックできます。
外転挙上は、上腕上方関節の機能と肩甲骨が体幹から離れ上方回旋することでスムーズに動きます。それには、脊柱と肩甲骨を結ぶ大・小菱形筋、肩甲挙筋、上肢と脊柱を結ぶ広背筋、肩甲骨と肋骨を結ぶ前鋸筋の柔軟性と三角筋、僧帽筋、棘上筋の筋力が必要で、肩甲胸郭関節の柔軟性がポイントになります。
肩甲胸郭関節や上記の肩甲骨外縁の筋肉群が硬かったり、棘上筋腱、胸鎖関節、肩鎖関節、肩峰下滑液包の機能レベルが悪ければ、動きにくさや肩峰上腕関節の周囲に有痛を感じることがあります。痛みが起こりやすい角度は肩関節外転位60~120度の範囲と言われています。この範囲はペインフルアーク(有痛域)と呼ばれています。[図D参照]
正常であれば、もちろん、痛みもなくスムーズに外転位180度まで動かすことができるわけです。
2) 肩回旋テストA
体幹に上肢を下垂し、ヒジを90度に屈曲させて、手を内・外旋方向へ動かします。その際、ヒジは体幹につけて固定しておきます。
正常であれば90度近く動きますが、外旋方向に運動制限が見られることがしばしばあります。そのような場合は、主動筋である棘下筋の収縮力の低下、および拮抗筋である肩甲下筋の柔軟性の低下、あるいは外旋方向に働く棘上筋や上腕二頭筋腱の機能低下が考えられます。
また、この可動性のチェックで、肩の前方部に痛みを感じる場合も多くみられます。軽い痛みであれば。アイシング、ストレッチを練習後に行ってみてください。痛みが強ければ上腕二頭筋腱の炎症の疑いがありますので、受診を勧めます。
3) 肩回旋テストB
このテストはあお向けになり、検査側の上肢を外転位90度に置いたまま、ヒジを90度に屈曲し、手のひらを床の方に向けたまま倒してきます。また、反対方向へも倒します。
正常であれば、内旋方向90度で手のひらが床に着きます。同様に、外旋方向90度で手の甲を床に着けることができます。疲労状態だと、手が床に着かなかったり、着いても肩が床から浮いてしまいます。また、このとき、痛みがどの角度でおこってくるかもチェックします。
これは、投球動作に近い肩関節外転上での内・外旋の動きの可動域をチェックする方法として有効です。また、このテストは、腕をしっかり肩の位置に導き、肩の安定感を確認してから行います。