[1]野球におけるヒジ関節の障害 | [2]ヒジ関節の機能と「野球ヒジ」発症のメカニズム | [3]球種とヒジ関節の障害 | [4]ヒジ関節の機能チェックテスト |
このように投球は、体幹と肩、ヒジ、手首、指関節に関与した筋群がそれぞれの球種に必要な働きをなし、フォームを決定し、パフォーマンスにつながるのです。投球によって疲労が激しくなると、それぞれのヒジ関節痛が現れることが多くなるので、機能チェックとして、次のようなテストを勧めます。
1) ヒジ屈曲テスト
肩の高さに腕を伸ばし、手掌を上にします。その状態からヒジを屈曲します。
三頭筋の柔軟性がよく、上腕二頭筋の収縮力があれば、指は肩につけることができます。ヒジがしっかり回外して屈しているかもチェックしてください。回内筋が疲労して硬くなっていると、前腕中間位に似た状態で屈曲が起こります。
2) ヒジ伸展テスト
ヒジを曲げた状態から手のひらを上に向けてヒジを伸ばしていき、ヒジの屈曲筋(上腕二頭筋)の柔軟性があるかどうかを見ます。
その際、伸びにくさや内側、あるいは外側に痛みを感じることがないかどうかをチェックします。(有痛部位のチェック)
3) ヒジ回内・回外テスト
ヒジ屈曲位からヒジを中間位におき、回内・回外させます。その動きを見たとき、可動範囲が正常の90度に動くかどうかを見ます。動きにくくなっている方向と、痛みがどの方向に生じるかもチェックしてください。
4) 手首の掌屈ストレステスト
ヒジ屈曲位で手首を屈曲させ、指導者がそれに抵抗を加えます。その際に痛みを感じた場合は、その部位をチェックします。
ヒジの内側に痛みを感じた場合は要注意です。アイシング、ストレッチ、筋力トレーニングをしても経過がよくならなければ、整形外科医にみせ、コンディショニングプログラムを立てる必要があります。
5) ヒジ回内ストレステスト
ヒジを伸ばした状態で手掌を回内させます。指導者は、ヒジの安定性を確保しながら親指側に抵抗をかけます。その際に、ヒジの内側上顆に痛みを感じることがないかどうかをチェックしてください。
投球のリリース時ではヒジが伸びた状態で、ヒジ回内の可動性が大きくなるため、そのときのヒジの内側部のストレス度を見ます。異状があれば痛みが誘発されます。
6) 手首の背屈・掌屈可動域テスト
このテストは、手首を背屈と掌屈させる筋群の柔軟性を見ます。
この筋肉が硬くなると、手首・指のしなりが悪くなり、球威やコントロールが乱れやすくなります。
【参考文献】
『運動解剖学図譜』(高橋彬・監修、ベースボール・マガジン社)、『整形外科理学療法の理論と技術』(山嵜勉・編集、メジカルビュー社)、『スポーツ主導者のためのスポーツ外傷・障害』(市川宣恭・編集、南江堂)