[1]運動軸となる腰椎の機能 | [2]腰痛の原因と腰痛症 | [3]打撃・守備・投球と腰痛 |
[4]腰痛症球児の共通点と予防 | [5]脊柱の機能チェックテスト |
腰は身体の要であるとともに、スポーツを行う上で重要な部位です。それゆえ、選手歴の長い人は腰に何らかの痛みや重みを感じたことが、少なからずあるのではないでしょうか。今回はPNFトレーニングを行う上で知っておいていただきたい、腰についての説明と脊柱機能のチェックについて紹介します。
1) 脊柱の構造と姿勢
脊柱は頚椎7、胸椎12、腰椎5、仙椎5、尾骨3の計32の椎体から成り、体の軸としての機能と脊髄神経を通す重要な働きをしています。そのなかで可動性があるのは24椎で、仙椎の上に腰椎があり、上方へ椎体が積み重なるように脊椎を形成しています。椎体と椎弓の大きさや可動範囲は機能解剖上それぞれ異なり、体重支持や運動軸としてもっとも大きな力がかかる腰椎は、頚椎、胸椎よりも比較的大きな骨で構成されています。また、椎体と椎体の間には、椎間板があり、椎体間、および椎弓間を結んでいる前縦靱帯、後縦靱帯、黄色靱帯とともに椎体の安定と椎体間の間隔を保持しています。
脊椎は起立姿勢だけでも重力や体重などの圧力がかかり、その圧力を吸収、分散しやすいように頚部の前弯、胸部の後弯、腰部の前弯、仙尾部の後弯という生理的弯曲をつくっています。この弯曲形成の比率は姿勢(正常・円背・亀背・平背・疲労姿勢など)にも大きな影響を与えています。姿勢は腰痛にも密接な関係があり、とくに運動の要である腰椎の弯曲(前弯角)は、疲労性腰痛症と関わりが深く、力学的にも体重を支えやすい弯曲を保つことが必要です。[図A、B参照]
2) 腰椎の構造とメカニズム
腰椎は前方にあるL1~L5の5つの椎体と、その間にある椎間板、後方の椎弓部で構成されています。椎弓部には、中枢神経である脊髄神経(運動をつかさどる神経や知覚神経)が通っている脊柱管があります。その両側に椎間孔があり、神経根が出て末梢神経につながっており、腰椎から下位の神経で下肢筋を支配しています。それらの神経は、中枢からの情報を下肢に伝え、下肢からの感覚を脊髄や脳へ伝達しています。
二つの椎体と一つの椎間板で1セグメントとして考えられています。二つの椎体間にある椎間板は弾力性があり、水分性に富む軟骨性線維輪から成り、中心にはゼラチン状の髄核があります。この椎間板のショックアブソーバーの機能や腰椎を支える筋群の働きによって椎体間の間隔を保持し、神経や椎弓部に負担がかかりにくくなっています。しかし、椎間板の内部応力を支えている水分性も20歳前後からしだいに脱水し、少しずつ変性していくと言われています。したがって、加齢とともに重力に抵抗したり、運動などによって体にかかる圧力に対する内部応力も弱くなってきます。
腰は体幹を使う運動のすべての軸となり、前屈(曲げる)、伸展(伸ばす)、回旋(ねじり)を起こします。それぞれの運動を起こす筋群として、脊柱を屈曲させ、体重を支えている前方の筋群(腹筋・腹斜筋・腹横筋・腸腰筋)と脊柱を伸展させ、運動を起こさせる後方の筋群(脊柱起立筋・広背筋・腰方形筋)、および下肢筋(大殿筋・ハムストリングス)があります。これらの筋群の働きによって、腰椎がしっかりサポートされています。[図C参照]
また、体重を支え、運動軸として大きなストレスがかかるのが、腰椎と仙骨でつくる腰仙角です。この角度の正常角は図Dに示しているように143度で、このリズムを腰仙リズムと呼び、この角度は前述した筋群の状態と仙骨角で変化します。