[1]運動軸となる腰椎の機能 | [2]腰痛の原因と腰痛症 | [3]打撃・守備・投球と腰痛 |
[4]腰痛症球児の共通点と予防 | [5]脊柱の機能チェックテスト |
スポーツ選手に多く発生する腰痛症には大きく分けて、疲労性腰痛症、椎間板変性をはじめとする筋肉、腱、靱帯、椎間板などの変性や炎症から痛みを有するものや、変形性脊椎症、腰椎分離症といった器質レベルの骨の異常、椎間関節症、すべり症ほかの位置のズレに、椎間板ヘルニア、脊椎狭窄症などの神経障害を有するものがあります。さらに、内科的な疾患からくるものもあり、腰痛の発生原因はたいへん複雑です。
筋性の腰痛の原因には、主に脊柱を支えている筋肉の疲労・弱化と骨盤を支えている下肢の筋肉の疲労・弱化があり、加齢や運動不足、あるいは運動のやりすぎによっても引き起こされると考えられています。
体重を支える筋群は腹筋群30パーセントに対し、背筋群70パーセントの比率で支え合っていると言われています。そのバランス(筋力・筋持久力・柔軟性)が激しい運動や長時間のスポーツなどで疲労が蓄積して崩れたり、あるいは腹筋の力が弱くなると背筋群へかかる負担がより大きくなって疲労が出現しやすくなります。
その疲労状態が長く続くと、腰背筋群の血行阻害が起こって筋肉の張力や弾力性が弱くなり、硬くなってきます。そして、図Eのように腰椎の前弯角が増強し、筋性の腰椎症を起こしやすくなります。さらに、柔軟性と持久力が失われた腰背部に繰り返しストレスが加わることによって、内部組織にまでダメージを与え、椎間板変性や神経症状を伴う腰椎症にまで移行していくケースが増えると考えられています。
図Fを参照してください。スポーツ選手に多い腰椎分離症は、疲労性疾患としてとらえられています。とくに、身長の伸びに比べて筋肉の発達が伴わない時期に伸展と回旋動作を繰り返し行うことで、筋付着部である骨に衝撃を与え、骨のオーバーユーズから疲労骨折を招くケースがよくみられます。
分離(疲労骨折)が起こりやすいのは、腰椎5番の棘突起の椎弓部です。この部位は腰椎の弯曲を起こす仙骨のすぐ上にあり、腰椎の後屈(後へそり返る)で痛みが出ることが多いようです。しかし、レントゲンで分離が認められても痛みがない場合も多く、疼痛の発生は腰椎を支える筋群の疲労度と関係があると考えられています。
分離症がさらに進行し、上位の腰椎が前方にすべり出した状態がすべり症と言われ、神経症状を伴うのが特徴です。分離がなくても、すべり症が見られるケースもあります。また、変形性脊椎症や腰椎椎間関節症も、加齢やスポーツなどの過度の負荷によって椎間板の弾力性が失われ、椎体間の間隔が狭くなり、後方にある椎弓部の関節突起どうしが摩耗したり、ズレたりすることで、関節包に負担がかかって炎症を招くと疼痛が発生しやすくなります。
椎間板ヘルニアは、運動などの外圧によって、変性の進んだ線維輪が損傷し、椎間板内の髄核が後方へ押し出され(膨隆・脱出)、脊髄神経を圧迫したり、炎症が起きるものです。それで痛みが誘発され、坐骨神経痛の発生やその支配下にある筋力の低下、あるいは反射機能の低下を招きやすくなります。