[1]運動軸となる腰椎の機能 | [2]腰痛の原因と腰痛症 | [3]打撃・守備・投球と腰痛 |
[4]腰痛症球児の共通点と予防 | [5]脊柱の機能チェックテスト |
実際に、腰椎分離症やヘルニアと診断されたり、あるいは筋肉レベルの腰痛症で、整形外科医などから紹介されて私のところへやって来る球児たちには、次のような共通点が見られました。
● 体幹部の筋群が弱い
(とくに下腹筋や下背筋の筋力と筋持久力の低下)
● 腰背筋、下肢筋の柔軟性の低下
(ラセグチェックSLRが正常の90度に対して、60~70度までしか挙がらない。この角度は有痛感があるときは変わるので、痛みのないときの角度)
● 自覚症状
(腰が重たい・だるい・伸びにくいなど)が日常生活レベルでも現れる。
● 長時間の同一姿勢がつらい
● 練習後のほうが有痛感がひどく、動作がしにくい
● 痛みがあるときは野球に対し自信がなくなっている
● 日々の練習時間が長く、体の休養をとる時間がほとんどないハードスケジュールをこなしていた
腰痛を感じてくると、心理的にも不安になり、消極的になりがちです。コルセット使用や安静加療が長いほど、筋肉の萎縮や関節の拘縮を招きやすくなります。同時に、痛みを有する局所だけではなく、全身的な体力や心肺機能の低下、神経調整力なども衰えてきます。
これはスポーツ選手にとってはいちばん大きなマイナスになり、痛みが生じた急性期から回復期に対して、いかに早く体育リハビリテーションを行っていくかが早期復帰への重要なポイントになります。また、この時期のリハビリトレーニングについては、本人のモチベーションを高め、運動の目的意識を持たせることが重要です。同時に、リラクゼーション行い、心身のリラックスを図ることも痛みの緩和につながります。
しかし、いったん腰を痛めると、なかなか思いどおりにプレーができなくなってしまいますから、大切なのはやはり、ひどくなる前にしっかりと予防することです。そのためには、次のようなことを絶えず心がけ、疲労を蓄積させないようにする必要があります。
● 体幹部の筋肉、とくに腹筋群(腹直筋・腹斜筋・腹横筋・腰方形筋)や腰背筋群(脊柱起立筋・回旋筋・広背筋・多裂筋)、股関節の屈曲筋(腸腰筋)、伸筋(大殿筋)、内・外旋筋(梨状筋)、内・外転筋、下肢筋群(大腿四頭筋・ハムストリングス)などの筋力と持久力、柔軟性を養う
● 練習前後の適切なウォームアップ(短時間で効果的なもの)とクールダウンの実施(十分時間をかける)
● コンディショニングの充実と適度な休養の確保(疲労回復)
● スポーツ後の栄養補給をバランスよく行う(とくにビタミンB群・C群・カルシウムなどの無機質類・たんぱく質・炭水化物)