[1]基礎体力づくりの重要性 | [2]筋力アップのためのトレーニングの原則 | [3]筋収縮の方法によるトレーニングの分類 | [4]PNFトレーニングとは |
筋力の増強を得るためのウェートトレーニングの方法は、エネルギーを出すときの筋収縮の方法によって、(1)アイソメトリック(2)アイソトニック(3)アイソキネティックに分類されています。
アイソメトリックとは等尺性筋収縮のことで、関節運動をともなわないで大きな負荷を一定時間かけ、抵抗とするトレーニング法です。このトレーニング法の弱点は、負荷のかかる関節角度において筋力が高まり、ほかの角度における筋力は鍛えられないという点です。同じ筋肉でも、力を出しやすい角度と力が出にくい角度が生まれます。[表2参照]
通常でも関節運動に働く筋群は、関節の角度によって力の発揮する能力が変化します(発揮しやすい角度と発揮しにくい角度がある)。そこで、関節運動にともなう弱点を補うために、発揮しにくい角度に対して大きなレジデンスを負荷し、アイソメトリックすることによって、動きの安定性を図ることができます。
一般的によく実践されているのが、アイソメトリックとアイソトニックを併用した方法です。
アイソトニックとは、等張性筋収縮のことで、関節運動を行いながら筋収縮を促す方法です。たとえば、ウェートを使ったトレーニングだけではなく、腕立て伏せ・懸垂・腹筋・スクワット・ジャンプなど、自分の体重を利用して行うトレーニングもあります。この収縮の方法には短縮性筋収縮と伸張性筋収縮があり、筋肉の力を発揮しやすいのは前者で、発揮しにくい方法は後者です。筋肉痛を起こしやすいのは、後者の伸張性筋収縮でのトレーニングです。
アイソトニックのトレーニングで、負荷を持ち上げる力(短収縮性収縮=コンセントリック)に対し、下ろすときの力(伸張性筋収縮=エキセントリック)がともなわない場合、いきなり下ろしてしまう結果になります。このため伸縮性が急激に起こり、腱や筋肉の損傷を招くトラブルが生じやすく、十分に配慮しなければなりません。
これはIRMを計測する際にも起こりやすいトラブルなので注意してください。また、フリーウェートのチューブにもこのような傾向があります。引き伸ばしに対して、大きな引き戻しが素早く起こり、反対側の作用の腱を痛めやすいのです。
安全上、持ち上げたウェートを反動ではなく、筋肉を使って基本肢位に戻せる負荷を設定することが大切です。また、言うまでもありませんが、筋力トレーニング後のストレッチは必ず行いましょう。
アイソキネティック(等速性筋収縮)は、全関節可動域にわたって同じ速さで最大張力を発揮するトレーニング法です。筋肉の力の出し方は、筋肉の収縮速度や角度によって、変化することから、可動域全体に同じ負荷がかかるトレーニングがもっとも実際に則しているため、この方法は、アイソトニックやアイソメトリックと比べて筋力増強を図るのにより効果的と思われます。[表3参照]
このトレーニングの特性である全可動域に対して等速で等負荷をかけるということは、全可動域に関わる筋群の力が大きく必要とされ、それぞれの可動に携わる筋群の主動・拮抗筋群もエネルギーを発揮しなければならないからです。とくに投手の場合、投球の際に必要な肩の強化には有効でしょう。また、低速度よりも高速度でのトレーニングのほうが筋収縮のエネルギーが大きく発揮され、筋力増加率が高まる傾向にあることが数多くの研究で確かめられています。
ただ、一般的にこのトレーニングに使用されるサイベックスマシンは高価で普及しにくく、トレーニングも一定のパターンに限定される問題があるのです。ですから、現実的なものとして、チューブやダンベル、徒手で抵抗をかける方法(PNF)がいいと思います。