[1]肩関節の機能と投球による障害 | [2]トレーニング前の可動域チェック | [3]肩のPNFトレーニングの方法 |
投球時に肩甲骨複合体を円滑に動かすために、さまざまな筋肉が重要な働きを担っていることは先に述べた通りです。具体的な使い方としては、テークバックでの肩甲骨の締め、それから生まれる胸の張りを維持したまま、アクセレレーションから加速に入ります。
その加速期の胸の張りを十分に利用し、リリースまで粘り、腰からねじりを入れ、ヒジ、手首、指が出るレイトスローイングで、上体を回旋しながら下半身に体重を乗せるようにフォロースルー期を迎えます。そうすることで、フォロースルー期での肩の後方で痛みが起こりやすい筋肉のストレスを、少しでも軽くすることができます。球威を高めるためにもこの投げ方をお勧めします。
それには、上腕骨をしっかり肩甲骨にはめ込む力強い腱のパワーや、肩甲骨帯の動きに関わっている筋肉を強くし、柔軟性を持たせることが不可欠になるわけです。そのことを理解した上で、肩甲骨帯がリズミカルに動くための筋肉づくりをしていかなければなりません。
トレーニング前には必ず可動域のチェックをし、筋肉の疲労状態を知ることも大切です。疲労状態はまず、可動域の制限というカタチで現れやすいので、連載第2回で紹介した機能チェックを行ってください。可動域を広げることは、肩への負担を軽くするためにも必要なことです。例えば、肩の前方挙上が178~180度を正常とすると、少し挙上しにくく170度くらいしか挙がらないとか、肩の外旋運動で窮屈さを感じ、正常な可動域の範囲内で十分に動かせない場合は、フォロースルーでの筋肉が伸びにくく、肩が重い感じを持っているケースが多いようです。
投球によって疲労度が高い筋肉のなかでも、棘下筋、棘上筋、菱形筋、小円筋、上腕二頭筋腱などに疲労が現れやすいと思われます。試合期、オフにかかわらず、疲労の軽減と持久力を維持できるようにするために、練習(投球)時間の合間をみて隔日間隔で小さい負荷のトレーニングと大きい負荷のトレーニングを組み合わせ、アクティブに筋肉の弾力性と神経の促通力を高めるPNFを取り入れてください。難しいテクニックは無理としても、基本的なテクニックで腱板や筋肉に刺激を与え、柔軟性を高めることが大切です。