[1]はじめに | [2]筋疲労が障害につながる | [3]体幹と下肢の疲労度チェック |
近年、選手にスポーツ障害の問題がクローズアップされるなか、いかに競技者生命を長く保持させ、ベストコンディションで試合に臨ませるかが大きな課題となっています。
スポーツ障害・外傷の発生原因には、スポーツ要因、内的要因、外的要因があります。とくに内的要因である個人の基礎体力(筋力・筋持久力・柔軟性・心肺機能)レベルが、スポーツ要因である強度・時間・頻度・種目に適応できず、障害を発症させるケースが多いと思われます。技術向上と基礎体力づくりの練習が、全身疲労や局所疲労となり、同一部位の繰り返し動作によってオーバーユーズ(使いすぎ症候群)を招くことになるわけです(図A参照)。
私のところには、スポーツ障害でいろいろな診断を受けた中・高生や大学、社会人の野球選手が、体育リハビリテーションを行うために、整形外科の紹介で訪れてきます。腱板炎・二頭筋炎・肩鎖関節炎による肩痛、内側・外側の野球ヒジ、腰なら疲労性腰痛症・腰椎分離症・椎間板ヘルニア・腰部捻挫。ヒザは膝蓋靱帯炎・鵞足炎、下肢筋の肉離れ・脛骨疲労性骨膜炎・アキレス腱炎などです。外傷は別として、そのほとんどが、日々のオーバーユーズや無理な投球フォームなどが原因だと考えられます。
コンディショニングやリハビリの内容は、ストレッチやスポーツマッサージ、AKA(関節運動学アプローチ)、PNFトレーニング、筋操作法、整体法をはじめ、バイオメカニクス(生体力学)に基づくフォーム改善などです。
それにより、痛みの軽減、機能の回復、投球や打撃におけるレベルアップにかなりの効果を得てきました。機能学に無理なく筋肉を使い、動きの支点となる関節へのストレスを軽減していくことが、投打の技術向上だけでなく、スポーツ障害の再発予防のためにも必要であるということを実感しています。
さて、この連載では、野球における疲労とスポーツ障害、肩・ヒジ・腰といった部位の実際の障害に対するコンディショニング法(PNFストレッチ・PNFトレーニング)から、理にかなった打撃・投球フォームの紹介、投手の肩づくりや変化球のための上肢と筋力トレーニング法などを主な内容として予定しています。私のトレーナーとしての経験(病院での臨床経験も含めると通算17年)も踏まえながら、進めていきたいと思います。
1回目の今回は、疲労とスポーツ障害のかかわりについて述べ、野球の投打、守備にとって重要な筋群である体幹と下肢の筋肉の機能・疲労度チェックテストを行いましょう。