[1]「野球ヒジ」と投球フォーム | [2]コントロールを高めるヒジと手指のコンディショニング | [3]球種ごとのヒジ、手首、手指のPNF |
野球で障害が生まれやすい部位としては、肩に次いでヒジが多いようです。これは投球という動作がヒジ関節にとって負担が大きい外反、回内、回外の動きによって起るため、ヒジ関節の構築学的ストレスが大きい上に、局所運動の繰り返しによって、筋肉、腱、関節の局所疲労が現れやすいことが障害を生み出す原因と考えられます。
また、障害とまではいかなくても、投球に必要なヒジから下にある手首や指を動かす筋肉が疲労してくると、その筋群の付着点があるヒジの周囲に張った感じが現れ、重たさ、だるさ、こわばり、あるいはヒジが伸びにくいなどの症状が出やすくなります。その結果、投球のコントロールや変化球のキレが悪くなり、球速も低下してきます。
私どものところへも、ヒジ関節の内側や外側に何らかの痛みを感じて整形外科に来診し、「野球ヒジ」と診断された小学生から中・高生、大学生、社会人、そして最近ではプロ野球選手もトレーニングに訪れてきます。これらの選手に対し、それぞれの状態に合わせて、ヒジを痛めてから回復期、そして再発予防の時期まで、個別にトータルプログラムを立ててコンディショニングを進めています。
実際にトレーニングを行う前の管理として大切なのは、ヒジを痛めた原因を知ることです。そのために、フォーム分析をはじめ、投球数や練習量などについて選手と協議をした上で、コンディショニングアプローチを決定していくことが再発予防にもつながっていきます。ヒジの障害についての原因、あるいは機能学については、連載第3回で詳しく述べていますが、今回はおさらいの意味も兼ねて簡単に触れておきます。
ヒジを痛めたり疲労が起りやすい投球には、オーバースローイング、サイドスローイング、どちらの投球方法でも、1)アクセレレーション期でヒジが肩よりも下がり、その状態でリリースポイントを迎えた場合、2)投球方向にヒジが向かないうちにリリースを行ってしまう投球方法、3)リリースの際に軽くヒジを曲げた状態で投げる場合、などです。このような投球法は、ヒジ外反位からヒジ回内への動きが大きく現れ、ヒジ関節の内側のゆるみが生まれ、ヒジが伸びようとするときにインピンジメント症状を招きやすくなります。いずれにしても投球数が多くなればなるほど、ヒジ関節の内側、外側だけではなく、ヒジ伸展筋(上腕三頭筋)の起始部と停止部にも凝りや張りを感じるなど、ヒジに違和感が現れやすくなるようです。ですから、選手や指導者は、常に関節の可動性をチェックするなど筋肉の疲労度を知り、早期に疲労回復を図ることが必要です。