[1]はじめに | [2]筋疲労が障害につながる | [3]体幹と下肢の疲労度チェック |
1) 体幹側屈テスト
この機能テストで、脊椎を支える左右の筋のバランスを判定します。これは肋骨と骨盤を繋ぐ腰方形筋という筋肉で、野球の投打の動作において、体幹の動きを必要とする際に働きます。この筋肉疲労も、疲労性腰痛症を招きやすいため、体幹側屈テストを行ってしっかりチェックしてください。
両足を骨盤の幅に広げて、両手は体側に置き、右側、それから左側へと倒し、左右のバランス比を見ます。その際、骨盤が床に水平になるように立ち、側屈する方向に対して反対側の足が床から離れないように留意しながら、前額面上にゆっくりと倒していきます。左右それぞれ50度程度まで、同じくらいバランスよく倒れればOKです。
2) 立位体前屈テスト
背筋、大殿筋、ハムストリングスの連動的な動きに対しての柔軟性をチェックするテストです。ベーシックで測定しやすいものですが、よりハードな柔軟性のチェックとなるため、ケガをしない十分な配慮が必要となります。
測定は、両足をそろえて立ち、ヒザが曲がらないようにゆっくりと息を吐きながら前屈し、伸ばした両手がどこまで到達したかで柔軟性を見ます(±0以上)。測定の際には、固い床面の線上ギリギリに立ち、決して無理をしないようにリラックスしながら行ってください。
3) ヒザ伸展テスト
これはハムストリングスの柔軟性を見るテストで、片方の骨盤は床につけた状態で片ヒザを屈曲させ、その状態からゆっくりヒザを伸ばしていきます。最後に足関節を背屈し、ふくらはぎの筋肉も伸ばします。
太ももの裏側の大腿二頭筋をはじめとする筋肉群・ハムストリングスは、走る、ダッシュするときなどの“蹴り”進む動きに必要な筋肉です。いかに速く脚を回転させ足を運ぶかにかかわる部分です。しかし、太ももの前側の大腿四頭筋に比べ、ハムストリングスは疲れやすいので、長時間にわたるトレーニングによって疲労が限界に達してくると相互のバランスが崩れ、走行レベルや柔軟性の低下を招き、肉離れなどを起こしやすくなります。
4) 大腿四頭筋テスト
腹ばい(腹臥位)になり、片ヒザと足首を介助しながらお尻(大殿部)のほうへ引き寄せ、カカトがお尻につけば正常です。
太ももの前側にある大腿四頭筋は脚全体を“持ち上げる”原動力となる働きがあり、この筋肉と股間節屈曲にかかわる腸腰筋や大腿直筋が硬くなっている場合は、足首をひきよせようとしたときにお尻が浮き上がり状態となります。このような状態が見られる場合、腰椎の前弯症があることが多く、歩行時の脚の振り上げも悪くなっているものなので注意してください。
5) しゃがみこみテスト
体幹と下肢筋の柔軟性を機能的にチェックするテストです。
カカトを合わせてつま先を広げ、お尻を下げながらしゃがみこんでいきます。体幹の重心は前傾させながら、どのレベルまでしゃがみこむことができるのかのチェックで、とくにふくらはぎの下腿三頭筋(ヒラメ筋や腓腹筋)の柔軟性やアキレス腱の状態も知ることができます。
カカトを浮かせて地面を“蹴る”とか、均衡を保ちながら着地したりするときに働く下腿三頭筋が疲労し、硬くなってくると、肉離れやアキレス腱炎を誘発したりする危険性があります。攻守において瞬発性を必要とする野球選手にとって、足首に関わる筋肉の状態をチェックしておくことは重要です。
6) ストレイトレッグレイズテスト
仰向け(背臥位)の状態からヒザを伸ばしたまま、片脚を上に挙げます。そのときに片方の骨盤が床から離れないように固定し、検査側の脚はヒザが伸びている状態で限界と感じたところで止めて、床からの角度を測定します。正常値は股間節屈曲角度にあたる90度です。
その角度によって、背筋、大殿筋、ハムストリングス(半腱半膜様筋)、大腿二頭筋の柔軟性をスクリーニングし、腰仙リズムが円滑かどうかをチェックします。このテストの結果によって、脊柱筋の疲労度(柔軟性)が理解できます。同時に腰痛予備軍とプレー中の腰の負担度を推し量ることができます。
また、脚を挙上する際に、「腰が痛い」という症状がないかどうか、もっとしたの大殿筋部、あるいはハムストリングスのツッパリ感がないかどうかもチェックしてください。
7) パトリックテスト
野球選手はバッティングなどの内旋方向への内に締める動作が多いので、脚の内側の筋肉と外旋方向の筋肉が疲労して硬くなりやすくなっています。しかし、守備においては、急に逆方向に開脚したり、外旋方向に動くことが多いので、そうしたときに内転筋や内旋筋などの筋肉や腱のトラブルを招き、痛めてしまうことがよくあります。
このテストでは。仰向けになって片ヒザを曲げたまま(股関節屈曲位45度)、検査するほうの脚のカカトを片方の膝蓋骨の下に置き、外旋方向45度へ動いていくかを見ます。また、その反対の動きである内旋方向にも動かしてみます。
このとき、どちらの側に行きにくいか、ツッパリ間がないかどうかなどをチェックします。とくにこの際に、痛みが股関節にあるのか、腰仙部にあるのか、重要なチェック法にもなります。(肩と上肢は次回で紹介)